お昼に新宿で友人と会う予定があった日、どうせ新宿に行くなら引っかけちまえと思い朝一で気になっていたレオ・レオーニ展に行ってきました。
レオ・レオーニと言えばスイミーやアレクサンダーなど小学校の教科書に載っているお話が有名ですよね。あれらが可愛らしい感じなこともあり、子ども向けのイメージを持たれやすいかと思います。しかーし!そんなことはなかった!もちろんかわいい原画もいっぱいあったけど、彼の作品や彼自身の魅力はそこにとどまらない。ということを初めて知った。今回はその大人も充分楽しめるな~と思った点について書こうと思います。
まず、彼の生い立ちについて説明する説明文を読んでなるほどなーと思いました。お母さんが歌手、お父さんがダイヤモンド技工士だったらしい。親戚に美術鑑定家がいたり、文化的な環境の中で育ったんですねー。早い段階から画家を志していたそうで、初期の作品もありました。絵本のイメージとはずいぶん趣が異なる、ざっくり言えば割と不穏な色遣いをするものばかりで驚きました。
次にそうだったのかと思ったのは、ユダヤ人で迫害を逃れて移住をしていたことです。移住を繰り返す中で多様な文化に触れ、何種類もの言語を扱うようになった彼は、自分は一体何者なのかというアイデンティティの問題に繰り返し向き合っていたとのこと。自分なんか移住の背景はさておき、たくさん言葉を操れるなんてすごい!とか思っていましたが、帰属意識が育たないという面もあるのだろうな。自分も職場で根無し草的勤務をしていた時期があったので、それはなんとなくわかる。アレクサンダーとぜんまいネズミというお話が彼のそうした葛藤を背景に描かれているそうで、やはり名作は作家本人の深い洞察が根底にあるのだなとしみじみしてしまった。経験がすべてだとは全く思わないし、経験をしたからと言って語るに値するところまで自分の中で消化したり昇華したりできるとは限らないのですが、経験をしたからこそ語れること、伝えられることって確かにあるんだなあと。
展示に入る前に、注意書きで「映像作品を全て視聴すると約70分になります」とあったので、ほう、と思っていたのですが、これまた大物だった。その中にはなんてったって、エリック・カールによるインタビューがありましたから。はらぺこあおむしの作者でお馴染みの彼です。このインタビューは一度見ただけじゃ味わい尽くせなかった…家であと10回くらい通しで見て、やっと腑に落ちてくるんだと思う。そういう、噛めば噛むほど味わい深い語りでした。彼は自らの創作のテーマとして「多義性」という言葉を繰り返し使っていて、それがなんだかとてもいいなあと思った。彫刻とか、ど素人の私には理解が難しい作品も少なくない。でも、彼の語る言葉はなんとなーく、理解というレベルを超えて、染み込んでくるものがある。それが何かもよくわからないんだけど、温かくて、自分にとって害をなすものではなく、むしろ気づかないうちに何かを育ててくれるようなもの。映像の最後の方には、彼の周りに子どもがたくさんいて、本の読み聞かせ?を行なっているシーンがあってそれもなんだかいいなあと思った。何気ないやりとりに機智があって、ああ、やっぱりすごく頭の良い人なんだなあと。
映像でふわんとした頭のまま次のスペースに行くと、彼が手がけた広告がずらっと並んでいます。全然知らなかったけど、割と長く広告会社に勤務していたそうで、その時の作品というか成果物?が展示されています。今までそんなに広告に興味はなかったんですけど、改めます。私は非常に勿体無いことをしてきました。広告って超面白い。広告って(よくわからんけど)「何を伝えるか」「どう伝えるか」「誰に伝えるか」がめっちゃ凝縮されたものだと思うんです。で、それって多分物凄く綿密に計算されていて、そしてある意味才能のようなものが必要なんだなと。それはアピールの巧さというよりも、物事の本質を丁寧に、丁寧に、愚鈍なまでに突き詰めていく姿勢。魅せ方やリサーチは勿論大切なんでしょうが、やはり「伝えたいことはなんなのか?」と自問自答を繰り返すことが深い理解に繋がり、結果としてより強く訴えかける広告に仕上がるのだと思います。
同僚にも広告会社から転職してきた人がいるのですが、もうめちゃくちゃすごいんですよ。ああ、そりゃまあ世間一般では高給取りだよな、と思った。エッセンスを抽出し、それをプレゼンする能力が高過ぎて、まじで高性能の機械だな!?という感じ。それでいて人間味たっぷりで、レオレオニもそういう人だったんだろうなー、と勝手に考えてました。
そして最後に物販でやられた。ここ数年、美術館に行ってもまずグッズを買わず、買わないことになんだか物足りない感覚を覚えていたのですがやられる時にはやられますね。普段はキャラ物を買うとかないのにな…なんだったんだろうな…これ買う前は透明で何の飾りもないやつだったのよ…?
黄色いというか結構派手なので、鞄の中で目について思いのほか良かった。いっつも地味なやつばっかり選んじゃって、しかも鞄も大体黒だし、文字通り埋没するんですよね~。これからは積極的に明るい色のものを選んでいこうと思った。
あと、これも超珍しい。普段キーホルダーなんてまず買わないし、買った記憶を遡ることすら現時点で出来ない。
ゴールドの縁取りがシックでね…これなら鞄に着けてもいいかなとか思っちゃって…いかにもキャラグッズな風貌をしていないじゃないですか、よく見たらなんかいるね的な。あんなスマホカバーを買った人間が言うようなことではないのですが。家に帰ってから封を開けたらこうなっていてびっくりした。
裏返すと赤い魚だった。その発想はなかったぜ。でも赤もいいね。
しかも見てくださいよこれ。
手提げのビニール袋までかわいいなんて罪だ。誰かに何かを渡す時に使います。この物販スペースはビル1Fにあって、展覧会のチケットを持っていなくても入れます。みんなめっちゃ買ってて、レジが長蛇の列になっていた。いやー、わかるよわかる。私も一筆箋とか付箋とか名入りハンコとかTシャツとかトートバッグとか缶入りのお菓子とかシールとかぬいぐるみ型ポーチとかありとあらゆるものが欲しかったですもん。心の中にひっそりと息づく子どもが顔を出しそうになっていたな…
割と真面目な話をしたつもりが、気付けば物欲丸出しで着地した。それもまたよし。